パーフェクト・インパーフェクト
雪夜とのあいだにあったこと、きっと海帆も、ちあきおばちゃんも、知らないでいるはずだ。
たぶん雪夜はなにも言っていないだろうし、これからも言わないつもりだと思う。
やつの性格的にも、
そして、わたしたちの関係的にも。
兄が「マジでうぜえ」とこぼして自室に引っこんでいった。
ちぇーつまんない、と妹が口を尖らす。
それを聞きながら、なんとなく、雪夜の背中を無意識に目で追いかけてしまった。
「ねえ、アンちゃん」
雑誌のページをゆっくりめくりながら、それには目を落とさないで、ちあきおばちゃんはわたしを見た。
「ユキね、あんな態度とってばっかりだけど、ほんとはアンちゃんとこの撮影ができたことをすごくうれしく思ってるはずなの」
「……まさか」
「ほんとよう。きっとアンちゃんの存在がなかったら先のコンテストに出ることさえしなかったと思う。昔からずっと、アンちゃんは、ユキにとって憧れの存在なんだよ」
あのツンツンした男の子を産み落としたとは思えないほどのんびりしたお母さんが、思い出を引っぱり上げるように、穏やかに目を細めた。
「不器用なあの子がなんだかお友達とうまくやれなくて、全部をイヤイヤってして敵ばっかり作ってたとき、アンちゃんだけがユキのヒーローだった。こんなかわいい女の子に『ヒーロー』だなんて、ちょっと失礼かもしれないけど」
「そんなことないよ……わたしなんて」
「そんなことあるのよ。ユキのなかではアンちゃんに守ってもらったって意識がほんとに強いみたい。ぶきっちょで、素直じゃないから、いつもいじわるばっかり言ってるけどね。ごめんね」