パーフェクト・インパーフェクト


「好きなの頼み直す? 俺らツマミばっかだから、料理も勝手にオーダーしていいんだよ」


瀬名さんのむこう側にあった料理のメニューを「こっちちょうだい」とわざわざ取ってくれて、お腹をちゃんと満たしてくれそうなゴハンもののページを開いて手渡してくれる。

そしてあろうことか、それと引き換えにして、わたしの手元にあったクソまずい、そしてすでにクソぬるい、ノンアルビールを持っていかれた。

本当に自然すぎて、止めることすら忘れた。


「これは俺がもらうから。飲み物も、新しいの頼んで」


この方は、菩薩か、なにかか?


「いやいや、さすがにソレはわたしが飲むんでっ」

「いいよ、ノンアルがダメってことは結局ビールの味が嫌いなんだろ? 俺は好きだから飲めるし、大丈夫」


でもビールってぬるくなると激マズだって聞いたことがある。

これは、リア談。


「あなたちょっと菩薩にもホドがありませんか!?」


もうわけがわからなくなってしまって、思わずわけのわからないことを言うと、皆川さんの顔からあの微笑みがすっと消えて、次の瞬間、彼はくつくつと喉を鳴らすように笑い始めた。


「なに? めちゃくちゃおもしろいね。モデルさんの口から菩薩って単語出てくんのけっこうやばいな」


ぽかんとしてしまった。


こんなふうに、笑うんだ。

顔をくしゃっとさせて。下くちびるを少し噛んで。眉間にしわを寄せて。オデコのあたりに手を当てて。


ていうか、この人も「ヤバイ」とか、使うんだ。

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