パーフェクト・インパーフェクト
「ふつうここで名前出さないから……」
弟さんのかわりに、瀬名さんがあきれたってふうに言う。
「……あおいって」
「もしかして……」
リアとかわりばんこに聞いたら、アキさんがニッと笑った。
本当に悪びれていない。
むしろ、超絶うれしそうな顔。
「寛人の大切な、かわいーかのじょ」
わたしたちは友達じゃないのに、どちらかというと仕事の相手なのに、こんなに暴露されて弟さんがかわいそう。
名前しか知らない弟さんの彼女さんもかわいそう。
あおいさん、聞いたことがないし、見当もつかないから、きっと一般人でしょう?
だけどアキさんを見ていると、からかってやろうっていじわるじゃなくて、ほんとに純粋に弟のことがかわいくてしょうがない、かまいたくてしょうがないって感じで、なぜかこっちのミーハー心のほうが消滅しちゃった。
「おまえいますぐ蒼依に謝罪の連絡入れろ。そしてとりあえず死ね」
こんな物騒な弟さんが愛した彼女さんとは、いったいどんな女性なんだろう。
あのユカっぺを捨て置いてまで選ばれた女性とは、いったい何者なんだろう。
いつもの癖みたいに名前を呼んだ響きが、ほんの少しだけ優しくて、どきどきした。
たったひとりの大切な存在なんだって言われているみたいだった。
ひょっとしたら、バンドマンはそんなに言うほど、チャラくないのかもしれないよ。