パーフェクト・インパーフェクト


だけど、すぐにリアのしゃべったことは全部ジョークという感じに流れて、それはアキさんがとても自然に話題を変えてくれたおかげだった。

言葉を上手に使える人はこういうスキルも持ち合わせているのだと感動する。


しかも、トイレに立つときわたしのほうへわざわざ寄ってくれて、「オレが変なこと聞いちゃったせいでヤな思いさせてごめんな」と耳打ちされた。

やっぱりこの人、すごくモテてきたと思う。
顔だけじゃなく、声だけじゃなく。

たぶん、こういうトコ。


アキさんがお手洗いから戻ってきたとたん、なぜか唐突な席替えが行われた。

というより、アキさんとわたしの席の入れ替えだ。
リアがアキさんを捕まえて離さないせい。


そんなわけで、わたしはなぜか、皆川さんと瀬名さんのあいだに座ることになってしまった。

ああ、左側が本当に静かだよ。
右側と同じ空間だとは思えないくらい。


瀬名さんは本当になんにもしゃべらない人だった。
ちょっとプレッシャーさえ感じてしまうほどだ。

これは、わたしがなにか話しかけたほうがいいのかな?


「あの」


瀬名さんと、その正面に座る弟さんが同時に顔を上げた。

だけどそのあとの言葉はひとつも用意していなくて困った。


なんで話しかけちゃったんだろ。

だって、ちょっと無言すぎて、いたたまれなくて。

この人たちっていつもこうなの?


「見る?」


まごついているわたしを見かねてか、これまでほとんど自発的にしゃべらなかった瀬名さんのほうから言葉を発してくれたのでびっくりした。


見る?
なにを?

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