パーフェクト・インパーフェクト


「したことないなら、俺とデート、してみる?」


もしかして、からかわれてる?

酔っぱらいの戯言につきあわされてる?

それともまさか、わたしいま、口説かれてる?


「します」


びっくりしたように皆川さんが目をまるくしたから、やっとそこで自分の発言を自覚して、数秒遅れてわたしもびっくりしてしまった。


しますって、なにを?

デートか?

わたし、正気か?


「いいよ」


訂正する間もなく言われた。

本当は、訂正するつもりなんて、ぜんぜんなかった。


「みんなに内緒な」


いきなり、声をひそめる。

優しかった微笑みが少しだけいじわるを含んだ感じにゆがんだかと思えば、皆川さんは長い人差し指をすっと口元へ寄せた。


たぶん本当に酔っぱらっているのだと思った。

酔いがさめたらきっと、こんな話は無かったことになっているのだろう。

そういう表情。
オトナのカオ。

大人になるとみんなこういうやりとりを平気でしているの?


でももしかしたら本気なのかもしれないって、期待にもよく似た気持ちがむくむく育つのを、なぜか、いまはどうにも無視できない。


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