パーフェクト・インパーフェクト
いろんなことを妄想しきったらどんどん興奮してきて、もう我慢ならなくなって。
ちょっとだけ背筋を伸ばしたら、広い背中のむこうにあるスマホの画面は簡単に見えてしまった。
その小さな箱のなかにいたのは幼い子どもだった。
どうひいき目に見ても、女性ではなく、赤ちゃんのような子どもだったよ。
言われてみればベイビーっぽいかわいい声がほんのり聴こえてくる気がする。
そうして耳をすますと、そのさらにむこうに、女性のような声もたしかに存在していて。
「そうだな、会ったらいっぱい甘やかしてやらないと。燈はウチの姫だもんな」
もしかしたら皆川さんは、既婚者なのかもしれない。
奥さんがいて、子どもがいる人なのかもしれない。
ていうか、なに?
『かもしれない』って。
ぜったい、そうじゃん。
そうとしか考えらんないじゃん。
これで「姉と姪っ子です」とか言われてもぜったいウソだよ。
そういうオチはドラマの世界だけに許されたハッピーエンド。
じゃあこれは、バッドエンド?
どうして?
なにが?
誰にとって、バッドエンド?
お酒も飲んでいないくせに急に吐き気がこみ上げて、あわててトイレにリターンした。
でもなーんにも出ないの。
ゲロも出ないし涙も出ない。
しょうもな。
そういえばバンドマンには気をつけろって、各方面からさんざん言われてきたんだったよ。
彼らはリアみたいな上級者向けのコースだってこと、なんとなくでも、ちゃんと聞いていた。