パーフェクト・インパーフェクト
べつに皆川さんに恋をしていたわけじゃない。
恋をしたかったわけでもない。
こんな数回のコンニチハで恋なんかしない。
ちょっと微笑まれたくらいで好きになんかならない。
優しく肯定されたからって簡単に落ちない。
デートに誘われたからってその気になんかならない。
ない。ない。ない。
ない、けど、むかついた。
ちがう。
むかつくよりもっと大きい、味わったことのないような気持ち悪さ。
処理できない、負の感情。
だって、もうちょっとで知らないうちに不倫の片棒を担がされる危機だった。
奥さん(仮)を傷つけてしまうところだった。
娘ちゃん(仮)を悲しい運命にさせてしまうところだった。
ああ、この期に及んでカッコカリって、わたしってかなりのばか?
「なにこれしんど……」
なんにも出なかったせいで透明なままの、空っぽの渦を見つめていたら、次は頭も痛くなってきてサイアク。
ふいにポケットのなかのスマホがぶるると震えた。
リアからメッセージが入っている。
『アンちゃん大丈夫?』
なに、いまさらのように。
リアなんか泥酔しきっているくせに。
ずっとアキさんとしゃべってばっかりのくせに。