君を好きになるって、はじめからわかってた。
結菜がカメレオンと呼ぶのは、同じ学年の川崎美矢だった。
「高宮先輩、私のほうがいいんだって」
校舎の陰。
部活生の声が微かに聞こえる夕方。
彼女が、私を呼びつけて高らかに言い放った。
──高宮先輩──
当時、私が付き合っていた1つ上の先輩。
私から好きになったわけじゃなかったけど、それでもちゃんと好きだった。
ただ、私に自信がなかっただけ。
だから先輩を傷つけた。
川崎さんの言葉が、耳を離れなかったの。
2人に何があったのかは知らない。
あの時ちゃんと先輩の言葉を聞いてあげてればよかった。
「私、高宮先輩もう飽きちゃったから、安井さんに返す」
「何言ってんの? 先輩を傷つけないで」
「傷つける? 傷つけたのは、あなたでしょ? 先輩の話し聞かないで簡単に捨てたのはあなた。だから私がもらってあげたの」
「あれは、川崎さんがあんなこと言うから」
「私のせい? バカ言わないでよ。私が何言っても、彼氏を信じれないあなたが悪いんじゃない」
そこに結菜が助けにきてくれた。
よく覚えてなくて、結菜に申し訳ないんだけど。
高宮先輩の卒業式。
最後にみた先輩の顔が、今でも消えない。
消せない。
はぁぁぁ。
明日、結菜にどんな顔して会えばいいんだろう。
私は、結菜とぎこちないまま別れてしまったことを後悔しながら、1人寂しく家を目指した。