君を好きになるって、はじめからわかってた。

 家に帰ると、いつものように直がお腹空いたと母に迫っていた。
 保育園児の怜は椅子に上がり、キッチンを覗きながら直の真似をしている。
 母はマイペースに鼻歌なんか歌って、自分の仕事をこなしている。
 
「あら。まどか、お帰りなさい~」

 まるでミュージカルみたいに母が言った。 
 
「おっ! 姉ちゃん、今日のおかずはなんと、からあげだぞ!」

 やけに嬉しそうな弟の直。
 まだまだ育ち盛りの14歳。
 恋愛より食い気だな。そんな弟が、素直で可愛いと思ってた。

 ただ今日に限って、直の顔をみると妙にイラつく。
 あぁそうか……フッ。

「なに、姉ちゃん。気持ち悪い」

 私はどうやら、直と青柳くんを重ねてしまった。
 けれど彼は直よりもずっと……大人っぽい。
 1年というブランクに、こんなに差がつくもんなの?  直が怜レベルにしか見えない。

「姉ちゃん、生理?」

 なんて奴! こんなこと言う奴じゃなかったのに。
 あぁぁぁ、直だって昔はもっと可愛いかったのに。
 そうだ! アホ和輝の影響だ。
 あいつとよく遊んでたからな~。

「もう! バカとアホと変人は1人でいいから!!」

 結菜と岩泉とあのコが頭を過り、思わず直にぶつけた。

「ヒドっ!! えっ、俺ってそんな存在!?」 

 直の声は聞こえていたけど、もう自分でも何がなんだかわからくなってる。

 八つ当たりなんかして何やってんだろ。

 私は部屋に入るなり、制服のままベッドに飛び込んだ。
 

『本当は?』

 結菜の言葉が突発的に浮かぶ。
 気づけば、数分寝ていたみたい。

「制服がシワになる」

 のそりと立ち上り、重たい制服を体から引き離すみたいに、ゆっくりハンガーに掛ける。
 
 それから直とも口を利かずに、黙々と夕飯を済ませてから入浴タイム。
 たっぷりの湯船に浸かり、結菜の言葉をまた思い出していた。

「ったく、本当は? って何よ!」

 思わず口に出して、また後悔して、結菜に謝る口実を考えながら、でも結局何も浮かばなくて、心がすっきりしないまま入浴タイムを終えた。

 部屋に戻り、いつもみたいに学生の仕事をやり遂げ、ベッドに潜り込み……いつの間にか朝を迎えていた。 
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