冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「……葵衣。来ていたのか」

 椿さんはすぐに私から手を離した。とっさに手で頬を覆うと、彼の体温が移ったのかほんのり熱を持っていた。


「お兄ちゃん、この子にセクハラしていたの?」

「していない、誤解だ」

 椿さんを“お兄ちゃん”と呼び、“葵衣”と呼ばれていたのは、イマドキの若い男の子だった。

 ゆるふわパーマのマッシュヘアは金髪に近い茶髪で、リングのピアスが見え隠れしている。グレーのトレーナーにストライプが入ったパンツというシンプルな組み合わせだけど、ネックレスやブレスレットなどの小物使いが上手でおしゃれに見える。

 ぱっちりとした大きな瞳が印象的で、女性アイドルのように可愛い顔のこの男の子は、どうやら椿さんの弟らしい。


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