冷徹副社長と甘やかし同棲生活

“葵衣さん”が女性ではなかったと知り、なぜだかほっとした。

「そんなの、本人に聞いてみないとわかんないじゃん。ねえ、お姉さん、変なことされてない?」

 眉尻を下げ、心配そうに聞いてくれる葵衣くんはとにかく可愛くて、感動すら覚えるほどだった。椿さんとは見た目も性格も似ていないようだ。


「大丈夫、大げさに言っただけなので。心配かけてごめんなさい」

「それならよかった。あ、僕は弟の葵衣っていいます。あなたは? お兄ちゃんの彼女?」

「そんなわけないだろう。彼女は家政婦で、俺の部下だ」

 葵衣くんの質問に対して、なぜか私の代わりに椿さんが答えた。いくら勘違いされたくないからって、間髪入れずに否定しなくてもいいのに。


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