冷徹副社長と甘やかし同棲生活

 ほっとしたのは、無事に注文できたというだけではない。バーカウンターに座ったということは、長居する気はないということだ。


 ジャズが流れ、タバコとは違うにおいが充満する大人の世界。胸が躍る素敵な場所にいるのに、早く帰りたくて仕方がなかった。


「先日は、生意気な発言をして申し訳ありませんでした」

 二人の前にカクテルが並んだと同時に、小さく頭を下げた。


「いや、俺こそせっかくの懇親会だったのに、気分を悪くさせてごめんね。とりあえず、仲直りの印に乾杯しよう?」

「……わかりました」


 本当は謝りたくないし、仲直りなんてしたくもないけれど、本音よりも建前を優先した。
 入社して二ヶ月、私もすこしは社会人らしくなったかもしれない。



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