冷徹副社長と甘やかし同棲生活
あの店から離れるにつれて、歩く速度もゆっくりになった。飲食店街を抜けると、人気のない道に出る。
私たちはしばらく無言だった。車の走る音が沈黙をごまかしてくれている気がした。
「――柏木」
一駅分程の距離を歩いたころ、椿さんは道の途中で足を止めた。
「……はい」
すこし前を歩いていた彼は、振り返って私と顔を合わせる。
切なそうに、瞳が揺れている。初めてみる表情に、目も心も奪われた。
「定時後マーケティング部に行ったが、お前以外はまだ仕事をしていた。同じ会社にいるんだ。嘘はすぐにばれる。……もう二度と、俺に隠し事をするな。」
「はい。昨日は嘘をついて、ごめんなさい……」