冷徹副社長と甘やかし同棲生活
「受け入れるもなにも……嬉しすぎて、どうにかなっちゃいそうです」
今できる一番の笑顔で答えた。椿さんは、ほっとしたように笑っている。
そして、私の顔に手を添えて、ゆっくりと顔を近づける。
私は目をつぶって、甘い最高の瞬間を待った。
唇全体で、柔らかい感触を味わう。唇を軽く重ねるだけのキスだったのに、からだがとろけてしまいそう。
「この続きは、家に帰ってからかな」
「こ、この続きって!」
「早くしたいから、さっさとタクシーを捕まえるか」
「いえ、せっかくなのでこのまま歩きましょう!」
「……たまにはそれもいいな」
キスの続きがなにかくらい、恋愛経験の少ない私にもわかる。
副社長とそういう関係になるのがいやという訳じゃない。むしろ、嬉しいのだけれど、まだこの状況に頭が追いついていない。
だから、せめて、この帰り道の途中に心の準備をしたいのだ。
とびきりの、甘い夜に向けて。