冷徹副社長と甘やかし同棲生活
3.最高の選択を

■もうひとりの兄弟

 
 椿さんに自分のすべてをさらけ出す覚悟はした。
 短時間で、精一杯心を落ち着かせた。――それなのに。


「俺は、なんてことを……」

「いい加減、元気になってくださいよ」

 すべての努力は無駄になったと、帰宅した後で知る。
 どうやら、椿さんは歩いているうちに冷静になり、【恩人の娘に手を出さない】というマイルールを思い出したらしい。


「交際の了承も得ていないのに、手を出してしまうなんて。恩を仇で返したも同然だ」

「いくらなんでも大袈裟ですよ。うちの親は細かいことは気にしませんし」


 といいつつ、実際に父さんが知ったら怒るんだろうなと、内心では思っていた。
 そもそも、副社長の家に住んでいることすら秘密にしているし。
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