冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「もちろん、そのつもりだよ。ただ、あまり時間がないことも忘れないで。医師からは、余命一年だと言われているから」

「わかった。また連絡するよ」

「待ってるよ。美緒ちゃん、突然おしかけて、暗い話をしちゃってごめんね?」

「いえ、とんでもないです」

 お兄さんは、もう一度「ごめんね」と呟くと、冷めたコーヒーを飲みきって席をたった。


 用件を伝え終えて帰るお兄さんを見送って、再びリビングに戻った。


 まるで嵐のように、爪痕を残して去っていく。
 
 椿さんは、しばらくうつむいて、ずっと何かを考えているようだった。


 お兄さんの頼みは、椿さんに家業を手伝ってほしいということ。つまり、今の生活を捨てろ、ということだ。


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