冷徹副社長と甘やかし同棲生活

 椿さんからは、葵衣くん以外の家族の話を聞いたことがない。
 だから、彼の実家がどこにあるのかも知らない。

 もし、椿さんが実家に帰ってしまったら、この家はどうなるのだろう。
 当たり前のように毎日一緒に過ごせなくなってしまうのだろうか。

 遠距離恋愛になったら、どうしよう。
 考えれば考えるほど不安になる。

 でも、私より椿さんのほうが不安に決まってる。
 実のお父さんが、末期がんで余命一年と宣告されているのだもの。

 少しでも、励ましてあげたい。
 そう思った私は、椿さんの隣によりそうように座った。


「……励まそうとしているのか?」

「ただ、椿さんの隣にいたいだけです」
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