冷徹副社長と甘やかし同棲生活
椿さんたちが学校で留守にしている間、葵衣くんはずっと一人ぼっちだったらしい。
ご飯を作ってもらえず、いつもお腹を空かせていた。同年齢の子供より痩せていたそうだ。
幼稚園に行かせず、小学校に上がる年齢になっても、お母さんは何の準備もしてくれなかったらしい。
「母さんにとって、葵衣は憎い愛人の子供だから、愛せないのはわかる。でも、それでも、あまりにもひどかった。兄さんと俺は、葵衣のことが可愛かったから……母さんの目を盗んで、葵衣にご飯を食べさせたりしたよ」
「お父さんは、どうしていたんですか?」
「親父は元凶のくせに、見て見ぬふりをして仕事に没頭していた。俺は、そんな親父が許せなかったよ。葵衣が七歳くらいのころだったか、ふと“絵本を描く人になりたい”と呟いたんだ。俺は、葵衣が夢を持っていることに感動して、涙が止まらなかった。こんなに辛い環境でも、夢をもって生きている葵衣を、心から応援したいと思ったんだ」