冷徹副社長と甘やかし同棲生活
……何もしないでいると、ネガティブなことばかり考えてしまう。
 かといって、この姿ではろくに家事ができない。

 考えた結果、気を紛らわすためにバラエティ番組を見ながら、椿さんの帰りを待った。


「ただいま」

 椿さんが帰ってきたのは、ちょうど五時になった頃だった。


「おかえり、なさい」


 ドレス姿が照れくさくて、いつものように駆け寄ってのお迎えはできなかった。
 リビングから出てすぐのところで、もじもじしながら椿さんを待つ。


「……美しすぎて、言葉が出ないよ」

 椿さんは、最高級の誉め言葉を口にすると、そっと私の手を取った。


「お姫様、お待たせして申し訳ございませんでした」 


 まるで王子様のように、私の手の甲にキスをする。
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