冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「椿さま、いってらっしゃいませ」

「ああ」

 
 スタッフの方に見送られながら、椿さんは車を走らせた。

 少しずつ陽が落ち始めている。オレンジ色の空は、ゆっくりと夜の衣にきがえていく。
 鮮やかな色が少しずつ黒に染まるその風景をみると、やけに切なくなる。

 真っ暗になってしまったら、魔法が解けてしまうような気がした。

 
 車の中では、あまり会話をしなかった。椿さんが何回か話題を振ってくれたけど、うまく続かない。
 でも、それほど沈黙が嫌には感じなかった。数か月だけど、二人で過ごした時間が積み重なっている証拠だ。


「着いたぞ」

 
 椿さんが予約してくれたレストランは、マンションから車で十五分程度の場所にあった。
 海に面していて、とてもロマンチックな場所。
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