冷徹副社長と甘やかし同棲生活

 予想はしていたのに、ショックは大きい。
 けれど、不思議と涙は出てこなかった。

 本当に悲しい時って、泣けないのかもしれない。


「二つ、聞いてもいいですか?」

「いいぞ、なんでも聞いてくれ」

「椿さんは、どうして私を採用したんですか? 恩人の娘だったからですか……?」


 ずっと、心のどこかで気になっていた。
 中垣さんは、私をコネ入社だと言っていた。ある意味、そうだったのかもしれないとずっと思っていた。

 葵衣くんは、違うって否定してくれたけど。


「そんなことを気にしていたのか? 前にも言ったが、お前に光るものを見つけたから採用した。まあ、今思えば、いい意味での先入観はあったな」
< 306 / 321 >

この作品をシェア

pagetop