冷徹副社長と甘やかし同棲生活
予想はしていたのに、ショックは大きい。
けれど、不思議と涙は出てこなかった。
本当に悲しい時って、泣けないのかもしれない。
「二つ、聞いてもいいですか?」
「いいぞ、なんでも聞いてくれ」
「椿さんは、どうして私を採用したんですか? 恩人の娘だったからですか……?」
ずっと、心のどこかで気になっていた。
中垣さんは、私をコネ入社だと言っていた。ある意味、そうだったのかもしれないとずっと思っていた。
葵衣くんは、違うって否定してくれたけど。
「そんなことを気にしていたのか? 前にも言ったが、お前に光るものを見つけたから採用した。まあ、今思えば、いい意味での先入観はあったな」