冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「先入観、ですか?」


「柏木は気づいていないかもしれないが、かしわぎの客席は、場所によってはキッチンが見えるんだよ。俺は、何度かお前が一生懸命働いている姿を見た。だから、面接で緊張している様子を見て、もっと頑張れるんじゃないかって思ったんだ」


「だから、あの時励ましてくれたんですね……。面接のあと、変装して店に来るようになったのは、緊張させないためですか?」

「ああ」

 
 副社長の気持ちが嬉しくて、泣きそうになった。けれど、遥くんに言われたことを思い出して必死に我慢する。
 来週から、今以上に気合を入れて仕事を頑張ろうと思った。


「もう一つの質問は何だ?」

「えっと、いつから私のことを好きになってくれたのかなって……」

「そうだな、正直、自分でもわからん。ただ、はっきりと自覚したのは、お前が俺のために泣いてくれたときだ。あの時は、すごく嬉しかったよ。……ありがとう」


 
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