冷徹副社長と甘やかし同棲生活


「……え?」


 副社長の声が聴こえた。ここにいるわけもないはずの、彼の声がだ。
 最初は、頭の中で社長が勝手に話し始めたのかと思った。でも違った。

 なぜか私の目の前には――カジュアルな恰好をした副社長がいる。


「何やお前。関係ないやつがしゃしゃり出んなや!」


「関係ある。なぜなら俺は、定食屋かしわぎの常連だからだ」


 副社長の手にはサングラスが握られていた。
 唯一お店にいたお客さんが、まさかの副社長だったことに気づく。

 でも、どうして彼が、こんなところにいるのだろう。
 常連客って、本当に……?


「借金は一千万ほどだと言っていたな。あいにく小切手は持ち合わせていないのだが、こちらに連絡をいただければすぐに用意しよう」
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