冷徹副社長と甘やかし同棲生活
 副社長は、私の腕をつかんでいた男の手を掴み、名刺を握らせた。


「しっこうやくいん、ふくしゃちょう……?」

 
「一応説明しておくと、広告業界のリーディングカンパニーといわれている企業の副社長をしている。一千万くらいなら容易く用意できると、お分かりいただけたか?」


「りーでぃんぐ、かんぱにいってなんや……」


「難しいことを話してしまったか、失礼した。とにかく、今後本件に関しては私が対応させてもらう。まあ、知人である有能な弁護士も同席させていただくがな」


 私とお母さんは、副社長と借金取りのやり取りを黙って見守ることしかできなかった。
 突然のことに混乱して、頭がおいついていなかったからだ。

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