冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「あ、あの、副社長……」


「なんだ? 柏木」


“副社長は、うちの常連だったんですか”と質問しようとしたけれど、母さんによって阻まれた。


「えっ、まさか隆弘くんが美緒のアイドル――」
「ちょっと、母さんストップ!!」


 朝のたとえ話が、母さんの脳内でねじれてしまっているらしい。
 副社長がアイドルなんて一言も言っていないのに。

 慌てて止めたせいで、顔が赤くなってしまって。余計に恥ずかしいことになっている。


 何より、母さんが副社長を“隆弘くん”と呼んでいることがたまらなく違和感。


「俺は、学生のころから定食屋かしわぎに通っている。社会人になった今も、店の味が恋しくて時々足を運んでいるんだ」


「そ、そうだったんですね……知りませんでした」
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