冷徹副社長と甘やかし同棲生活
 
「ふふ」

「……何がおかしい?」

「いえ、何も」

 冷徹な仕事人間というイメージが先行しているけど、本当は人間味のある人なのかもしれない。
 学生時代からずっと同じ店に通っているくらいだもの。……と頭の中で考えているうちに、無意識に笑っていたらしい。

 
「よくわからんが、少しは緊張が解けてきたみたいだな」

「そうみたいです」


 副社長が話題を振ってくれたからだろうか、いつの間にか肩の力が抜けていた。
 大きく息を吸って、ゆっくりと吐いてみる。今までは感じなかった、爽やかな香り。

 エアコンの送風口に目をやると、四角形の消臭剤が取り付けられていた。

 近くの物入れの中には、同じ銘柄のタバコが何箱かおいてある。



 
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