冷徹副社長と甘やかし同棲生活
 
「ええと、そうですね。食事についてですが、平日のお昼はどうします? お弁当を作りましょうか?」

「いや、大丈夫だ。外出していることが多いし、急に手作り弁当を持参したら社長にからかわれそうだ」

「社長、からかったりするんですね」


 社長は入社式で一度見たことがある。からだが丸くて、穏やかな話し方をする人だ。
 直接話したことはないけれど、たしかに冗談を言って場をなごませるのが得意そう。

 
「まあな。他にはあるか?」

「ええと、そうですね」

 就職活動時代の名残か、何個か質問をしないといけない気がして、頭の中で思いめぐらせる。
 副社長がいろいろ決めてしまっているから、これといって何も思い浮かばない。

「特にありません」と口を開こうとしたら、先にきゅるるという間の抜けたお腹の音が沈黙を破った。




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