Elevator Girl
やっと、仕事が軌道に乗ってきた矢先。


父親が病に倒れた事をきっかけに、世界が一変した。


仕事仲間に事情を話す暇もなく、あわただしく社長に就任した先に待っていたのは、

心のない、冷たい関係だった。


仲の良かった同僚達、ひいては厳しかった上司まで、
一歩引いたような、壁のある笑顔をつくる。


皆、他人行儀に頭を下げ、

社員時代に難航していた企画も、あっさり可決された。




本当の自分を。

社長でない、一人としての自分を、

見て欲しくて、

認めて欲しくて。


父とは違うことに、新たな改革に、夢中になった。



エレベーターガール制度の廃止も、その内のひとつだった。

父が、反対を受けながらも続けてきた、エレベーターガール制度。

人件費がかかるだけの、会社として、断ち切るべき部分だと思っていた。





「エレベーターガールの細やかな心遣いは、訪れる人を幸せにします!」



エレベーターガールの採用試験に、これが最後だと思いながら同席した際、

爆弾のような言葉が、耳に飛び込んできた。


面接官も驚いたように、互いに顔を見合わせる。

それもそのはず、
当時の会社内でのエレベーターガールの認識といえば、

見た目重視の、お飾り部署。

20代女性の、結婚までの腰掛け仕事。


父親の理想だった、おもてなしの心遣いの理念は、

誰にも理解されていなかった。




< 60 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop