Elevator Girl
「私は、このビルに来る人全員を、幸せにしたいんです」


面接官は、彼女の真っ直ぐな瞳に押されながらも、

慌てて常識を振りかざす。


「…そんなことは、現実的ではありませんね」

「若いよね、結婚願望は?」

「すぐ辞めるにしては、理想を掲げすぎだ」



彼女はひとしきり、つまらない返答を聞いて、

むっとしたように、子供のように拗ねた顔をする。



「辞めたりなんか、しません!

…いろんな人が、このビルを訪れます。

楽しそうな人だけじゃない、

孤独で、寂しかったり、つらい仕事の息抜きに訪れる人だっています。

私は、うつむいてビルに来た人を、帰る時には笑顔で送り出したい。

ずっと、一生、

ここにいて、お客様を幸せにします!」




日向あおいの、熱のこもった、真っ直ぐな言葉に、

体を貫かれた。


そして、幼い時、初めて訪れた父のビルで、

笑顔で出迎てくれたエレベーターガールの姿に、

心踊った時のことを思い出した。





< 61 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop