さよならメランコリー
やられた、と思った。
コウキくんは当たり前にこういうことを言うけど、そのなんでもなさそうに投げた言葉が私にとって想像以上の大ダメージだということをちゃんとわかっているのだろうか。
こんなにも寒いのに、上へ上へと急速に熱が集まっていくのがわかる。そんな私を見てコウキくんは一瞬キョトンとしたけれど、すぐに面白いものを見たというようににやりと笑った。
「なにトウカ、照れてんの?」
「照れてない、ぜんっっぜん照れてない!」
この熱にどういう意味が含まれているかなんて全く気づいていなくて、ただふざけているだけだってわかる。だから私はそんなに慌てて否定しなくたっていいし、むしろこういう機会を逃さずにコウキくんをドキドキさせちゃうような一言を言ってやればいい。
男の子に気を持たせる仕草、笑顔。
恋に涙したあの日からずっと意識して実践してきたそれらは、もうほとんど理解しているつもりだ。
こうすれば男の子は嬉しいでしょ?私に興味を持つでしょ?私を可愛い女の子だと思うでしょう?
そうやって男子に気を持たせるようなことばかりするのは、コウキくんの気をひくための予行練習だ。女子に陰口を叩かれたって別に何とも思わない。あなたたちがブサイクな顔をしている間に私は一歩好きな人に近づくんだ。
勝ち誇ったようにそう思っていた私に嘘はない。