さよならメランコリー

「え、」


何かを決心したような表情があっという間に崩れる。虚を突かれたような間抜けなものに変わって、それからやっぱり赤くなる。

私からこんなことを聞かれるとは思っていなかったみたいだ。そうだよね、私だって何があったってそれだけは自分から聞くもんかと思っていた。


「カナちゃんのこと、すき?」


それなのに何言ってるんだろう、私。しかも笑ってるなんて、ついに頭がおかしくなったのかもしれない。


どんな笑顔かはよくわからない。

性格の悪い私はまた嫌味な笑い方をしているのかもしれないと思ったけれど、それとは少し違うような気がした。だからと言って、当然気分よく笑っているわけでもない。じゃあ、この奇妙な笑みは一体なんだろう?


「え、まって、いや……」


自分のタイミングを奪われたコウキくんは視線をふよふよと泳がせて、耳まで真っ赤にしている。ごめんね、意地悪したかったわけじゃないんだよ。


「コウキくん」


視線を掬うと、困ったようにコウキくんが眉尻を下げる。私は繰り返される呼吸のなかで、その瞳が真剣な色を帯びていくのをただじっと見守っていた。


私ね、コウキくんのことがずっとすきだったけど最近までそんな表情は知らなかったよ。いつも自信満々で頼りになるのに、今はほんのちょっぴり情けない顔をしているね。可愛いなと思う。すきだなと、思う。

すきな人の、まだ見ぬ一面を知れること、それはすごく幸せなことだね。
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