さよならメランコリー
意を決したようにコウキくんが私を見つめ返す。皮肉にも、飄々と掴み所のない彼が今まで私に見せたなかでいちばんまっすぐな瞳だと思った。
「……すき、だ」
ねえ、コウキくん。すきな人の親友に報告するだけなのに、まるでほんものの告白みたいだよ。すきな人が、今ここにいるみたいだ。
伝染した熱に気づかれないように、私はふいと顔を逸らした。
「やっぱりそっかあ」
「やっぱりって……もしかして気づいてた?」
「みーんなわかっちゃうよ、あんなにわかりやすかったら」
クスリと小さく笑うと、コウキくんが「まじか……」と本当に恥ずかしそうに両手で顔を隠したから、私は「まじだよ」って返してあげた。
変なの。なんで笑ってるんだろう。変なの、変なの。
「コウキくん」
「なんだよ……」
「うん、すきだよ」
伝えるべきか伝えないべきか、迷う前にそう言っていた。この状況で告白なんかしたら完全に関係が壊れるのに馬鹿だなあ私。
ほとんど勢いだけの告白。だけど、ずっと汚いと思っていた感情が言葉にしてしまうと思ったよりも単純で、穏やかなものだったから少し拍子抜けた。
長い沈黙の間、手のひらの向こう側にある表情を想像していた。あんなに集中していた熱はもうどこにも見当たらない。