その件は結婚してからでもいいでしょうか

「わ、わかった。心が女子なんですね!」
美穂子は叫んだ。

「えー、わかっちゃう?」
自称桜先生が、くねっとしなを作る。

そうか!

美穂子はホッとする。

男にあんな繊細な漫画が描けるわけないもの。

「うっそー。ストレート」
自称桜先生がいひひと笑う。

「ストレート?」
「女が好きってこと」

美穂子は思わずダンッと勢いよくテーブルを拳で殴った。
それから混乱する頭をもしゃもしゃとかきむしる。

「だって、そんな。あんな素敵な漫画を、こんな汚い部屋の汚い住人が」
「汚い住人って、失礼な」
「だって、汚いですよ!」

美穂子は怒りに任せて立ち上がった。

「男ですよ! 毛穴があります!」

負けじと自称桜先生も立ち上がった。

「毛穴がなかったら、髪の毛も生えないだろ!?」
「悠馬くんは毛穴がなくても、髪はフサフサですっ」
「そんな男、むしろ気持ち悪いってもんだ!」

美穂子は絶望に悲鳴をあげた。

「自分が作ったキャラを、気持ち悪いって! 信じらんないっ」
「だってあれは、作り事だよ。リアルな思春期の男の頭ん中は、えろえろ!」
「え、えろえろ!?」
「いつ女とヤれるか、しか考えてねーって」

「んな、バカな!」
美穂子は怒りでだんだんよくわからなくなって来た。

「中島悠馬とかいう優等生も、エロいことしか考えてねーよ。描いてないだけで。なんなら今から描いてやるよ、えろえろ悠馬」
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