その件は結婚してからでもいいでしょうか

えろえろ。
エロエロ。
悠馬。

「さいってーっ!」
美穂子の感情が爆発した。

「サイテー! サイテー! サイテー!」
涙がポロポロ溢れてくる。

あの漫画の世界観を、目の前の男が造って、そんでもって壊した。

わたしの宝物なのにっ!

美穂子の大粒の涙を見た、自称(いや、いいやもう)桜よりこ先生が、とたんに真っ青になる。
アワアワしながら、美穂子の元に飛んできた。

「なっ、泣くなよー、こんなことで」
床に落ちてるTシャツを拾って、美穂子の涙を拭こうとした。

何考えてんだ、このやろ。

バシッン。
美穂子は勢いよくその手を弾いた。

「落ちてる着古しTシャツで、女性の顔を拭くなんてこと、ありえないーっ」
「ああ、ごめんごめん」

先生は立ち上がると、デスクから箱がインクで汚れたティッシュを持ってきて、美穂子の前に差し出した。

美穂子は先生を睨みつけながら、ティッシュを二枚抜き取った。メガネを持ち上げ、次々込み上げてくる涙をぬぐう。
先生は困ったように、美穂子の目の前で、床にぺたんと座り込んだ。

部屋には美穂子の鼻をすする音だけがしばらく響く。

しばらくすると、美穂子の気持ちもだんだん落ち着いてきた。

あれ、わたし、やりたい放題してるけど……。

それから冷や汗をかき始める。

どうやら目の前にいるのは、ホンモノの桜よりこ先生。
憧れの先生を罵倒して、大泣きした。

やばい。
アシスタント、クビになる。
< 16 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop