その件は結婚してからでもいいでしょうか
止まらない。
ページを捲る手が止まらない。
気がつけば午前六時。カーテンの外側がほのかにあかるくなってきている。
布団も出さず、壁に寄りかかったまま、ただひたすらに読みまくった。
中島悠馬くんが出る『花と流星』も、もう何度も読んだのに、また最初から最後まで読んでしまった。
「ああ、好き」
美穂子は目を閉じて、うっとりとその余韻に浸る。
それから再び目を開けて、雑誌が並ぶ本棚を見上げた。
あの男の人が、この作品を描いたんだ。
信じられないけれど、もし本当なら、あの人の頭の中は一体どうなってるんだろう。
見てみたいかも。
どんな風に描いてるのか。
美穂子は立ち上がり、部屋を出た。
夜から開きっぱなしのカーテンのおかげで、南東向きの窓から太陽が昇ってくるのが見える。再びゴミをまたぎながら、リビングを歩く。
先生は、ソファの上で寝ていた。ペンを口の端にくわえ、胸の上に置かれた手には紙がある。
「先生」
美穂子は一定の距離をとって、声をかけた。
先生は動かない。
「先生っ!」
美穂子は声を張り上げた。
ガバッと先生が起き上がる。口からペンが床に落ちた。
「あれ? 寝てた、俺」
頭をくしゃくしゃっとかくと、先生は美穂子を見上げる。
「へへへ。美穂ちゃん、おはよう」
ちょっと照れたように笑った。