その件は結婚してからでもいいでしょうか
「先生の身の回りのお世話させてください」
美穂子は勇気を出して言った。
「そう!? やったあ。やっと人間的な生活ができる」
セーターをたくし上げ、ぽりぽりとお腹をかく。
美穂子は眉をしかめた。
「でも、女子にお腹を不用意に見せるのは、やめてくださいっ」
美穂子が言うと、先生はびっくりした顔をして、それから「ごめん」とセーターをなおした。
「じゃあ」
美穂子は息を吸う。
「これからわたし、大掃除しますから。先生はシャワー」
「シャワー?」
「男の人が不潔なのは、耐えられません」
きっぱりそう言うと、美穂子は腕まくりした。ガラッと窓ガラスを開けると、朝の冷えた空気が勢いよく流れ込む。
「さぶっ」
先生は自分の体を抱きしめると、ぴょんぴょん飛びながら廊下のバスルームへと走った。
「ごゆっくり」
美穂子は背中にそう声をかけてから、自分にエンジンをかけた。
ゴミを拾い、まとめて玄関へ。脱ぎ捨ててあった衣類は洗濯カゴ。人型にシミができてるんじゃないかと思われるほど、汚そうなソファのカバーを剥いで、中のクッションをベランダに干した。
リビングだけでも、すごい時間がかかりそう。
美穂子が洗濯カゴを扉の閉まったバスルームの前に置く。
「先生がシャワーから出てきたら、これを洗濯!」
そう口にしたとたん、ガラガラと扉が静かに開いた。ほんの数センチの隙間から、湯気がほわーっと立ち上る。