その件は結婚してからでもいいでしょうか
「美穂ちゃん」
扉の隙間から、先生の濡れた髪と目が見えた。
ほんのりと赤く染まった、首と肩の一部も。
美穂子は反射的に飛び退いた。
「美穂ちゃん、お願いがあります」
先生がとてつもなく申し訳なさそうな声を出した。
「……なんですか?」
美穂子は、その隙間をなるべく見ないように答えた。
「パンツ、持ってくるの忘れちゃった」
「は?」
美穂子の苛立ちスイッチが入る。
「リビング横の部屋に、洗濯物がピンチに干したままになってるんだよね。そこから一枚」
「い・や・で・す!」
美穂子は喚いた。
男子のパンツなんか、触れない。絶対やだ。
「でも、パンツがなかったら、服が着られないし」
「汚いから、いやです」
「だから、洗濯したって」
「やだやだやだ」
美穂子がブンブンと首を振ると「わかった」と声がした。
「わかった。じゃあ、俺が『このまま』の格好でとってくる」
「……このまま?」
「このまま!」
美穂子はがっくりとうなだれる。
「とってきます」
「よろしく」
先生の勝ち誇った「わはははは」という声が響いて、美穂子はすでに疲弊しはじめている。