その件は結婚してからでもいいでしょうか
「二次元卒業?」
山井さんがにっこりと笑う。
「卒業は出来てない気がします。それをひっくるめて、好きっていうか」
先生にペンの魔法がなかったら、好きになったりしなかったはず。
「え、何それー。2.5次元なの?」
吉田さんが尋ねる。
「2.5次元?」
山井さんがビール片手に首をひねる。
「漫画やアニメのコスをして、二次元と三次元の中間あたりにいる人たちのことらしいです」
「ああ、テニプリとかね」
美穂子は首を振った。
「違うんです。漫画家さんです。その描いてる姿を見たときから、そのペンを持つ指に触られたいって思うように」
「えっろ」
小島さんがもんどりうった。
「じゃあ、わたしと似た感じだ」
山井さんが言う。
「えー。山井さんは神様崇める感じに近いじゃん。美穂ちゃんはもっとうちらの世界に近いよね。目の前にいて、触れる距離にいる」
山井さんの好きな人と、一緒なんだけど、な。
美穂子はしゃべりすぎたかと、慌ててビールを煽る。
「いいじゃん、それ。一種のフェティシズムだよ」
「そんな特殊ですか?」
「うーん。みんな経験してるんじゃない?」
「わたしも感じたいっ」
吉田さんが喚く。
「じゃあ吉田さんは、ダイエットをまずして」
山井さんがバシッと言った。
「はあい」
吉田さんは返事をしながら、また唐揚げを口にいれた。