その件は結婚してからでもいいでしょうか

午前一時。みんなと別れて、美穂子は一人先生のマンションへ帰ってきた。

飲みすぎた。

足元がふわふわしてる。エレベーターに乗るのもやっと。なんとか廊下を歩いて、部屋のドアを開けた。

「たらいまかえりますたあ」
美穂子は真っ暗な玄関で叫んだ。

そのまま玄関に座り込んだ。自分の部屋まであとちょっとなのに、その距離が歩けない。

ふらふらからグラグラへ。心臓がどくどく脈うってる。体が熱い。

リビングへのドアが開いて、廊下の明かりがパチンとついた。

「美穂ちゃん、大丈夫?」
いつものスウェットを着ている先生が、しゃがんで手を差し伸べてきた。

先生の手。この手、たまんない。

「うふふ」
美穂子は思わず腕を伸ばした。

「飲み過ぎだ、こら」
先生が憮然とした顔をする。

「布団しくから、待ってて」

ああ、行っちゃう。行っちゃ、やだー。

美穂子の部屋でしばらく物音がしたあと、先生が出てきた。

「立てるか?」
「立てないですー」
「仕方ないなあ、もう」

ふわっと体が浮いた。

先生の肩。腕。
指も好きだけど、肩も腕も好き。

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