冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
由佐さんは困ったようにそう言って小さく笑った。
そういえば谷池さんが由佐さんのこと、『課長って感じがしない』って言っていたけど、そういうのを彼は感じ取っているんだ。意外と繊細な人だったりするのかもしれない。だから無理してでも仕事して、課長らしい部分を常に見せようとしたのかな。

わたしも由佐さんのことを課長という感じがしないと思っているけれど、それはこの会社で働く前にBarで知り合っていて、仕事以外のことでの関わりがあったから。
それは由佐さんも、わたしには課長として接するのとは違うものがあって、だから力が抜けるのだろう。

わたしだって、由佐さんとは仕事上の関係とは違った意識で会話をするときがある。
さっき由佐さんに『いい加減にしてください』と言ったときだって、普通は上司に向かってそんなことをズカズカ言わないだろうし。

それでも、彼のことを“課長”だってわたしは認めている。

「みんな課長についていこう、頑張ろうって思っているはずですよ。うまく言えませんけど……とりあえず、無理はよくないです。わたしはきっと、課長がいつもと違ったら気づきますからね。そのときは心配しますよ」

だって、気になる存在だから。結局わたし、由佐さんに惹かれているんだもん。
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