霞村四丁目の郵便屋さん
「どっちのって? ふたつもあったっけ……」


俺たちのやり取りをみて、みやびが笑いを噛み殺している。


「みやび、笑ってもいいぞ」

「えっ、ううん」


みやびに指摘すると、一旦はこらえたもののクスクス笑いだした。


「転校生にまで笑われるとはな」

「お前が仕向けたんだろ」


純一はバツの悪そうな顔をして反論するけれど、俺が数学のノートを取り出した瞬間、目の色を変える。


「ありがとうございます、瑛太さま!」

「自分でやらないと、テストのとき知らねぇぞ」

「おっしゃる通りです。でも、今はなにとぞ!」


『お代官さま!』とつきそうな口調で純一が言うと、みやびが再びうつむきながら、クスッと笑みを漏らした。


おしゃべりな純一のおかげで、みやびとも会話が増えてきた。
とはいえ休み時間は女子が彼女を取り囲むので、俺の出番はない。


でも、時折みやびの笑い声が聞こえてくると、クラスメイトと打ち解けているんだと、まるで保護者のように胸を撫で下ろした。
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