霞村四丁目の郵便屋さん
それからバスが来るまでの二十分。
ベンチに座ったみやびは、数学の宿題を取り出して始めた。

俺はといえば、チラチラみやびの様子を視界に入れながら、スマホでゲーム。
数学が得意な俺は、授業中に宿題を済ませてある。


「その前の計算が違ってる」

「あっ……ホントだ」


割り切れず悩んでいるみやびに、つい声をかけてしまった。


「あー、できた。瑛太くん、ありがとう」

「どういたしまして」


返事をしながらまたスマホゲームを始めると、バスがようやくやって来た。

みやびは慌てて荷物をカバンにしまいだしたものの、消しゴムが膝の上から転げ出し……。


「あっ……」


俺がそれを拾おうとすると、みやびの手も伸びてきて、手が重なってしまい慌てる。


「あっ、ありがとう」


みやびは少し恥ずかしそうに手をひっこめたけれど、俺から消しゴムを受け取り、にっこり笑った。


ちゃんと体温のある生身の人間だった……。

彼女は妖精じゃない。
いや、妖精でも幽霊でもない。
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