霞村四丁目の郵便屋さん
バスに乗り込むと、やっぱり乗客は俺たちふたりだけ。
この時間は俺たちのために運行してくれているようなものだといつも思う。

それでも次のバス停で珍しく六十代くらいの女性がふたり乗り込んできて話し始めたから、少しにぎやかになった。


「数学、全部できた?」

「うん。瑛太くんのおかげ」

「そんなことはないよ」


俺は計算ミスを指摘しただけ。


「苦手なら教えるよ」


口下手な俺は、やっとのことで彼女と話すきっかけをみつけた。


「ホントに? すごく助かる。サインとかコサインとか暗号に見える……」

「あはは、たしかに。わかりやすい参考書持ってるから貸そうか?」

「うん!」


どうやら俺は、女子の笑顔ってやつが好きみたいだ。
純一は困った顔が好きだとか、マニアックな発言をしていたけれど。

しばらく数学の解説をしていると、みやびは身を乗り出すようにして熱心に聞いてくれた。


「すごい。先生よりよくわかる」


そう言われると照れる。
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