霞村四丁目の郵便屋さん
「みやびは国語が得意なんだろ? 俺、苦手だから教えてよ」

「国語は教えることなんてないよ。小説文の答えは、自分の意見と違っても万人受けしそうな答えを書けばいいし……」


彼女はそう言いながら俺に視線を合わせたけれど、その姿が一瞬遥に見えた。
読書の好きな遥も似たようなことを言っていたからだ。



『なんでこんな答えになるんだよ』

『私もこうは思わなかったけど、一般社会はこうなってるの。多数派の答えを書けば正解で、本当の答えは求められてないんだよ』


国語が好きじゃない俺が『なんだよそれ』と悪態をつきながら溜め息を漏らすと、遥は大笑いしていた。



でも違う。目の前にいるのはみやびだ。
同じ霞村に住んでいるというだけで遥と重ねてしまう俺が間違っている。

大きな町のバス停で乗客が降りると、またふたりだけの貸し切りになった。

やがて終点の河原町のバス停に着きバスを降りたところで、「それじゃあ、さようなら」とみやびが先に声を上げる。


「うん。じゃあ」


俺はそう言ったものの、彼女が歩いていく姿をじっと見つめていた。
今日は見失わない。絶対に。
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