霞村四丁目の郵便屋さん
気合を入れるために大きく息を吸い込めば、池の水の上を通って来た心なしか冷えた風が肺の中に入ってくる。

みやびは俺がついてくることを時々確認しながら、道なき道を進んでいく。
といっても、周りを木に囲まれていて当然舗装もされていないのに、足がドロドロになるわけでもなく、家の近所のアスファルトの道を歩いている感覚だった。


「あっ……」


右側の木の上でなにか動いた気がして思わず声を上げると、みやびは振り向き、俺の視線をたどる。


「リスだよ。おいで」


その『おいで』は俺に向けられたものではなく、リスに向けたものだった。
しかもそのリスがスルスルと木から下りてきてみやびが差し出した手に収まったから、また口をあんぐり開ける羽目になる。

リスって人間の言うことを聞くんだっけ……。


「かわいいでしょ」


みやびの微笑みにはなんの違和感もない。
それなのに、起こっていることは違和感だらけだ。


「あ、うん」


まともな返事すらできない俺をクスッと笑う彼女は、リスを放し再び歩きはじめる。
そして……。
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