霞村四丁目の郵便屋さん
奥の扉の向こうには、想像していた‟家”があった。
仕事場とは違い、ごくありふれた風景が広がっている。

最初に通されたリビングらしき部屋は、純和風の俺の家とは違い、なんだかお洒落。
床はワックスで磨かれているのかピカピカで、よくあるカウンター式のキッチンは、あの幻想的な森の光景と一線を引いているように思えて、ホッとした。

ここはたしかに人間が住む家だ。


「瑛太くん、ジュースでいい?」

「うん、ありがとう」


ごく普通に会話を交わしながら、俺の目はリビングの至る所をチェックしていた。

それは、一度は俺たちの家となんら変わらないと思ったものの、よく見ればどこか違うんじゃないかという疑いを捨てられずにいたからだ。


「そこ、座って」

「うん」


みやびに勧められ素朴な木の質感が心地いい椅子に座ると、彼女はジュースの入ったコップをふたつ持ってきて一枚板でできた立派すぎるテーブルに置き、向かいに座った。


「グレープしかなかったんだけど、いい?」


彼女から渡されたのは、濃い二藍色のグレープジュース。
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