君が残してくれたもの
教室へ向かっていると、


「はよ」


後ろから声がした。


「おー。おはよ」

樹里が挨拶したのは、海晴くんだった。


「おはよ」

海晴くんは私を見て、少し丁寧に挨拶してくれた。


「おはよう」

樹里のついで、だとしても少しうれしい、女心。


はにかむ気持ちを最大限隠して挨拶。


「おはよ」

この声は…


パッと顔を上げると、


「あ。罪な男」


樹里の言葉で、私は凍り付き、桜樹は不思議そうな顔。


「お、おはよ」


慌てて挨拶を返した。


そして、さらに慌てて周りを見渡した。


でも、樹里がバスケ部で海晴くんとも仲が良く、海晴くんと最近仲がいい桜樹が一緒にいたとしても別に不思議ではない。

樹里は男に媚びを売るタイプではないため、女子からの反感を買いにくいようだ。


「昨日はどうも」

桜樹の言葉に、樹里が、

「昨日?」

険しい顔。

さっきのこともあってか、敏感になってる。


「バイト先の花屋にね、来たんだよ」

私が慌てて言うと、


「バイトしてんの?」

海晴くんが聞く。


樹里が敏感になっているのは、たぶん桜樹と関わると私が傷つきかねない、と心配してのことだろう。


「期間限定だけどね」


そう言うと、女子たちの視線が徐々に突き刺さってきたので、教室へと足を速めた。


樹里はOKでも、私が樹里と同じ振る舞いをすれば標的になってしまう。
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