君が残してくれたもの
なずなと赤ちゃんの写真…

お母さんになったのか。

もちろん父親は海晴くんで、赤ちゃんは海晴くんそっくりの男の子だ。

こんなに似るのか。

もう一枚は、男の子が3歳ぐらいで、もう海晴くんのミニチュアみたいになっていて、小さな赤ちゃんが写っている。

ピンク色の服を着せているということは、女の子だろう。


なずなに、似ている。

それが受け継がれて、この子が生まれたのか…?


咲楽ちゃんの顔を見ると、目があって微妙に赤面。


写真の下にも何か入っている。

出てきたのは、大量の押し花だった。


目に付いた押し花を手にした。

「これ、桜だ」


僕の言葉に、咲楽ちゃんが覗き込む。


「これが桜?うわぁ、綺麗」


僕たちの名前の由来。
この子も、桜を知らないんだな…

初めて見る花に、咲楽ちゃんは目が釘付けになっている。


僕はなんだか嬉しくなって、1つずつ丁寧に説明していく。


「これは、菜の花、すみれ、すずらん、なずな...」


そして、その下には種が入っていた。


僕の居る未来に、引き継がれてきたこの宝物たちが、僕が確かに彼らと一緒にかけがえのないときを過ごしたことを証明してくれている。



「そういえば、今日、花火上がりますよ?その先の人工湖の先で」

耳を疑った。
え?花火?

この時代に花火なんてなかったはず...

誰も、花火という言葉さえ知らないのに。

「私の祖父が上げてくれるんです。花火職人です、兼業ですけどね」


写真の中にあった、海晴が持ってた玉って...花火?


「嘘だろ、海晴。すごいよ、お前」


涙が出てきそうになったけど、咲楽ちゃんの前だ、我慢しよう。


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