イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
その日の夜。
遠子は、帰宅した直倫と一緒に夕食を囲みながら、アルバイトに誘われた話をした。
移動販売をしている金木さんは、一年ほど前からあのあたりで販売をしているのだが、最近とみに忙しくなってしまい、新しく人を増やしたいと考えていたのだという。
多いときは日に数人、時折外国人のお客さんも来るので、助けてもらえたらありがたいということだった。
「で、やるのか?」
直倫がチキンのトマトソース煮込みを口に運びながら問いかける。
スパイスがきいたトマトソース煮込みは、パンによくあう。
これもタコのマリネも、金木のお手製らしい。
家庭料理をうたいながらも、家庭よりはちょっとだけ手の込んだ、ごちそうだ。それなのに値段は百貨店の総菜売り場よりお手頃だから、人気が出るのもうなずける。
「……ちょっと考えさせてくださいって言った」
「へぇ」
直倫は遠子の返事が少し意外だったらしい。顔をあげて目を丸くした。
「お前のことだから、即決でやると思ったのに」