イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
だが、自分がここにいては“あのブスはどこのどいつだ”と思われてしまうかもしれない。
それだけは避けたい。
なんとなく、最近はあまり考えなかったことが、多数の好奇の目にさらされてじんわりと浮かび上がってくる。
(変な汗かいちゃう……)
遠子はハンカチを出し、ぎゅっと握って手のひらを拭いてから、槇兄弟を見比べた。
「じゃあ私帰るね」
「――は?」
「は?じゃなくて。もうそれ渡したから。じゃあシロちゃんもまたね」
「おい、待て」
サッと踵を返して立ち去ろうとした遠子の手首を、後からやすやすと直倫が捕まえた。
「わっ……」
驚いてよろめく遠子だが、直倫はそのまま遠子の肩を引き寄せた。
「別に急ぐ必要はないだろう。ニートなんだから」
「ニートって……」
(違わないけど……違わないけどー!)
「どっかでメシ食べよう。付き合えよ」
「えっ! 心の準備が!」
「なにが心の準備だ。行くぞ」
そして直倫は引きずるようにして遠子を連れてエントランスを出て行く。
「行ってらっしゃい」
そんなふたりを見て、白臣はにこやかに手を振るのだった。